【患者】 60代前半、男性
【主訴】 「1週間ほど前から、急に左手の親指がばね指になってしまった。近所の治療院へ行ったけれど原因は分からず、日にち薬(時間が経てば治る)と言われて困っている」
【既往歴】 心筋梗塞、熱中症(共に救急搬送歴あり)
【現病歴】 約1週間前、特段の誘因なく発症。他施設への相談履歴はあるものの状態の改善は見られず、日常生活における手の使用に支障をきたしているため来院となった。
続きを読む緩消法研究会では、緩消法施術による症例報告を掲載しています。
【患者】 60代前半、男性
【主訴】 「1週間ほど前から、急に左手の親指がばね指になってしまった。近所の治療院へ行ったけれど原因は分からず、日にち薬(時間が経てば治る)と言われて困っている」
【既往歴】 心筋梗塞、熱中症(共に救急搬送歴あり)
【現病歴】 約1週間前、特段の誘因なく発症。他施設への相談履歴はあるものの状態の改善は見られず、日常生活における手の使用に支障をきたしているため来院となった。
続きを読む【現症】 左母指の屈曲状態から伸展する際、明らかな弾発症状(ばね現象)を認める。自覚的な疼痛はないものの、物品を把持した後に手を離しにくいといった機能障害の訴えがある。
【施術と結果】 本症例は、左母指屈筋腱の肥大により、腱鞘もしくは支帯の通り道に対してサイズが大きくなっていることによる物理的な抵抗が生じているものと推察した。触察にて母指中手指節関節(以下 MP関節)付近の屈筋腱部に顕著な腱の肥大を確認したため、同部位を施術開始箇所とした。
当該部位への緩消法による施術を開始し、約5分間で腱の肥大部位の弛緩を触知した。直後に患者より、母指伸展時の引っかかりが消失したとの報告を得た。
本介入は施術体験の限られた時間内において、患者自身が改善への予断を持たない状況下で実施されたが、直後の変化に対し、患者より「こんなことでばね指治るの?」との驚きの報告を受けた。また、初回施術より約1ヶ月経過した時点での面談においても、弾発症状は消失した状態が持続しているとの報告を認めた。
【考察】 本症例において、1週間持続していた母指の弾発症状が約5分間の介入で解消し、かつ1ヶ月にわたり良好な状態が維持されている事実は、本症状の主因が不可逆的な構造変化ではなく、腱の過緊張に伴う機能障害であった可能性を示唆している。MP関節周囲の腱の肥大部を速やかに弛緩させたことが、腱鞘通過時の物理的な抵抗を低減させ、正常な指運動の回復に寄与したものと推察される。
【その他】 短時間の介入で持続的な効果を認めたが、既往歴等にみられる全身的な循環因子や、日常生活における無意識の負荷が局所の緊張を再発させる懸念は残る。今後は、根本要因となり得る体幹部や腰部を含めた広範囲な筋弛緩を継続していくことで、さらなる状態の安定および完全な再発防止に繋がる可能性があると考えられる。