【患者】40代前半、男性
【主訴】横になり起き上がる時に腰に激痛が走る、足に力が入りづらい
【既往歴】急性腰痛
【現病歴】1日前の夕方に階段で足を滑らせ落下、仙骨・腰部周辺を強打した。
その時の痛みは打ち身程度のもので問題なく動くことはできたが、次の日の起床時に腰からに激痛が走り、起き上がれなくなってしまった。
30分程、動かせる部分である上半身から少しずつ動かすことで腰部や足も動かせるようになったので起き上ることができた。その日から、座った状態から立つ、寝返りを打つ、横になっている状態から起き上がる時に腰部に激痛と脱力感が発生するようになった。
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【現症】椅座位、仰臥位の継続では痛みの発生はしない。
椅座位から立位へ姿勢を変える瞬間に第5腰椎と仙骨周辺に激痛と両股関節に脱力感が発生する。歩きだしと歩行時では、第5第4腰椎周辺に痛みが発生するが寝返りや起き上がり時の激痛と比べると半分ほどだった。左右の股関節に痛みと脱力感はあるが、右股関節のほうが特に強い痛みがあるとのこと。歩行時に胸腰部が約10°屈曲されており、背筋が伸ばしきれない状態だった。歩きだしと歩行時では、仙骨周辺には痛みは発生しなかった。
【施術と結果】本症例は、階段から落下後に発生した腰部周辺の痛みと脱力感である。脱力感があることから神経障害も考慮に入れ、慎重に確認をしながら施術を進める。
腰部周辺から仙骨周辺を触察すると、第4第5腰椎・第12胸椎・第1腰椎高位周辺の右側脊柱起立筋周辺に強い緊張がある。
階段落下時の強い衝撃の後に発生している脱力感と痛みであることから、衝撃から体を守るための筋緊張と筋骨格系損傷の防衛の為に起こっている筋緊張の可能性が高いと推察した。筋骨格系損傷の防衛の為の筋緊張の場合、痛みや脱力感のある個所への直接施術は更に脱力感や痛みを増加させることがあるため、腰部脊柱起立筋周辺への施術は避ける。
第4腰椎高位・体幹部中心から右へ約10cm周辺の筋を触察すると筋緊張がある。この部位は第12胸椎から腰椎上部に関連する筋であるため、歩行時の姿勢維持や痛みの軽減に効果があると推測し施術箇所とした。
椅座位にて約5分、第4腰椎高位・体幹部中心から右へ約10cm周辺に緩消法を行った。筋弛緩を確認できたため、椅座位から立位の動きをしてもらう。椅座位から立位へ姿勢を変える瞬間の痛みが10から7(NRS改変)へ減少。歩行時の胸腰部が約10°屈曲する状態もなくなり、ほぼ真っ直ぐな姿勢で歩行が可能になる。
歩行時の痛みに変化はなかったが、脱力感が減少し楽に歩けるようになったとのこと。