【患者】40代後半、女性
【主訴】中学生から続いている体全体の怠さ
【既往歴】虫垂炎術後
【現病歴】中学生の頃より全身に倦怠感があり、現在まで続いている。
近医にて幾度か精密検査を受けるが脳・血液・内臓には異常は見当たらなかった。今まで鍼灸施術やマッサージなどを行い、症状の浮き沈みはあるが倦怠感は続いている。一日の中でも時間が経つにつれ倦怠感は強くなっていき、夕方が一番つらいとのこと。倦怠感がひどくなると意識を保つのが難しくなり、多数の人が話している声が聞こえなくなることもあった。
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【現症】来院時、安静時にて全身の倦怠感があるが、痛みの自覚症状はなし。関節の可動域としては問題なく、今現在の自覚症状は全身の倦怠感と頭重感のようなものであるとのこと。胃腸の調子は悪く、下痢気味であることが多い。
【施術と結果】本症例は、約35年以上前から継続している全身の倦怠感である。近医にて精密検査して異常がないことから病的な問題はないとする。
倦怠感が全身に広がっていることから、いくつかの可能性を考察していく。
全身の血行不良・肝臓や胃腸の疲労・呼吸器の不調、そして頭部への血行不良による脳が本来の動きができない可能性が倦怠感の要因と考えた。
話の中から胃腸に不調がある。視認にて細身であり虚弱傾向であるように見られ、主観ではあるが呼吸の浅さも感じられた。
以上のことから推測し、肝臓や胃腸の不調によるもの・呼吸器に関与する筋から胸椎下部・腰椎上部周辺の筋緊張があると予測。触察により胸椎下部・腰椎上部周辺を確認すると、胸椎12番・腰椎2番高位周辺に特に強い筋緊張を触知した。腰椎2番高位・中心より約5cmに硬結のような筋があり、呼吸や胃腸・肝臓などに関連する箇所であることから施術個所とした。
約5分、緩消法を行い筋の弛緩を確認、施術前より押圧深が約2㎝になった為、状態の確認を行う。上半身の軽さを感じ、倦怠感が薄れているとのこと。
腰部の施術個所は決定したが、頭部への血行不良も全体の倦怠感に深く関連していると考えた。現在、頭重感があること、過去にひどくなると多数の人が話している声が聞こえなくなっていることから、これは頭部への血行不良が元よりあり、そこに腰部の筋緊張による血行不良が上乗せされて起こったものと推測した。特に感覚野に近い部位への血行不良が起こっている可能性があり、頚椎上部周辺に筋緊張があると推測した。触察により頚部上部周辺を確認すると、左右の頚椎1番高位周辺に強い硬結のような筋緊張がある。左右頚椎1番高位周辺を施術個所とするが、本人の体力を考え頚部の施術時間は短くする。左右頚椎1番高位周辺を左右ともに約1分の緩消法を行い、筋の弛緩を確認した。その後、腰部の施術に戻り腰椎2番高位周辺の筋弛緩を時間内で緩消法を行った。
施術終了後、立位にて本人より全身が軽くなったとご報告いただいた。