【患者】50代後半、女性
【主訴】手の親指の付け根が痛い
【既往歴】椎間板症
【現病歴】2年前に尾骨周辺を強打した後、全身に激痛が広がった。安静にしていたら痛みは軽減してきたが、鈍い痛みは残存していた。
その後、全身の脱力感が表れ、体を支えているのが億劫になり、機敏な動きができなくなっていった。近医脳外科にて精密検査を受けたが、異常は見当たらなかった。
朝晩に体操やストレッチを行うことで脱力感は小さくなったが、しばらくすると右手に痛みが発生した。その後、左手にも痛みが発生するようになっていき、特に両手の母指の痛みが強くなった。
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【現症】安静時でも多少の脱力があり、両手全体に疼くような痛みがある。両手の母指は安静時には強い痛みは発生していないが、母指自動関節可動域(以下、ROM)は左回旋約20°・右回旋約0°で第1手根中手骨関節(以下、CM関節)周辺に痛みが発生する。
母指以外の四指は動かしても痛みの憎悪はないが、力の入りにくさと不快感がある。
右CM関節が先に痛みが発生していたが、現在の痛みの大きさについては左右のCM関節周辺の痛みに差はないとのことだった。
【施術と結果】本症例は、左右のCM関節の痛みと力の入りにくさと痛みである。
両CM関節に出ていることから感染症やその他の疾患を疑われるが、近医脳外科にて検査を受けている事、同時発生ではないことから疾患の可能性は除外した。力の入りにくさも発生していることから脳・神経障害の可能性もあるが、近医脳外科にて検査を受けていることから脳障害の可能性も除外した。
痛みと力の入りにくさ、不快感が両手に発生している。脳・神経障害を除外していることから筋の緊張により収縮が困難になり、力のはいりにくさが発生していると仮定した。
CM関節周辺の痛みは慢性化していると思われるので、筋の緊張によるものと仮定した。 筋の緊張により力の入りにくさは、視認において両手とも母指と示指の握りが遅い。
母指と示指に関連する筋緊張が強いと判断し、まずは左前腕部を触察する。橈骨頚周辺の筋に緊張が強く触知されたので関連する筋と判断し施術個所とする。
約1分、緩消法を行い筋の弛緩を確認できたので痛みと力の入りにくさの確認を行う。母指自動ROM、左回旋約20°・右回旋約0でCM関節周辺の痛みが10から5(NRS改変)と減少した。力の入りにくさは約50%減少した。