【患者】70代後半、男性
【主訴】首を動かすと首から肩にかけて痛みが出る
【既往歴】腰痛症、変形性股関節症、糖尿病
【現病歴】朝、起床時に首を動かすと頚部から肩部にかけて激痛が走った。しばらく動かず仰向けのまま痛みが引くまで安静にしていた。首を動かさなければ激しい痛みは出なくなった。
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【現症】頚部自動関節可動域(以下、ROM)伸展約5°で下部頚椎周辺の両側に痛みがあり、左右の肩部周辺にも痛みが発生する。頚部自動ROM左回旋約10°・右回旋約10°・左側屈約10°・右側屈約10°と大きな左右差はなかったが可動域が狭いように思われる。伸展以外での自動ROMでの痛みの発生はなく、可動制限のみであった。
【施術と結果】本症例は、来院当日の朝に誘因なく発生した頚部周辺の痛みである。特に誘因がなく発生し、痛みも激しいようなので急性を疑う。発痛部位である下部頚椎には熱感のような状態はないと本人の談と、安静状態では痛みが小さいことから組織の損傷はないと思われる。下部頚椎を中心に頚部・肩部を触察すると左側に筋緊張が大きく、特に第6・7頚椎左側周辺の筋緊張が大きい。本人に痛みの左右差を訪ねると頚部左側のほうが痛みは強いとのこと。第6・7頚椎左側周辺の筋を施術部位とし筋弛緩を開始する。
約1分、緩消法を行い筋の弛緩を触知したので痛みの確認を行う。自動ROM伸展約5°での下部頚椎周辺の痛みは10から0(NRS改変)と消失した。
筋弛緩部位は第6・7頚椎左側周辺のみであったが下部頚椎周辺右側の痛みも消失していた。
要因となる筋緊張が下部頚椎左右ともにあっても、筋緊張の強い側の筋弛緩を行うことで広い範囲で痛みが消失した一例であった。