【患者】70代後半、男性
【主訴】歩く時に左足に力が入らない
【既往歴】腰部脊柱管狭窄症術後
【現病歴】10年以上前に激しい腰痛が発生し歩行困難となり、近医整形外科にて脊柱管狭窄症と診断される。
3年前に腰部に手術をし、腰痛は軽減、歩行は可能になったが左足に力が入らなくなった。近医整形外科に定期的に通院しているが特に異常が見当たらないとのこと。その後、腰痛が再発したが以前のような激しい腰痛ではなく、日常生活は可能な状態。自転車に乗っての移動が生活の中で必要だが、左足に力が入らないのは危険であることから今はなるべく自転車の操縦は控えている。
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【現症】歩行時に左足に力が入らないとの訴えであるが、足全体ではなく左中足骨から末節骨周辺に力が入らないとのこと。正確な位置の自覚が困難だったので、実際に歩行動作を確認する。直立状態から右足を前に出す動作、荷重の受け継ぎの時に左中足骨から末節骨周辺に力が入らず転びそうになる。左足を前に出す動作は問題なく行えることから、左股関節や膝関節には殆ど問題がないと考えた。椅座位では足指の可動は可能であった。
【施術と結果】本症例は、運動麻痺に近い状態であると思われるため、神経的な問題がある可能性を考慮し施術を進める。本人の話により、近医整形外科の医師から異常は現在、見当たらないと言われていることから、神経異常や内臓疾患の可能性はこの場では除外した。筋が過剰に緊張することにより力が入りづらくなり、運動麻痺と本人が感じることがある。
本症例の場合、歩行時に力が入らないという自覚だが、椅座位では足指の可動は可能であることから、自覚症状がある足先には問題がないと推測した。腰部腸骨稜周辺の筋の緊張により足の動きに影響を与える事がある為、腰部への触察を行う。左腰方形筋腸骨稜付着部の外側周辺に硬結のようなものが目立つため施術部位とする。
左腰方形筋腸骨稜付着部の外側周辺に緩消法を2分程行い、筋の弛緩を確認できたため歩行の確認を行う。本人の自覚で2割程、力が入りやすくなり、歩行に変化が見られ本人も驚いていた。目視においても施術前よりスムーズに歩いているように見える。
歩行に変化はあらわれたが腰部の筋緊張部位は多く全てを軟らかくするのは時間がかかるため、本人も緩消法を覚え実践していく事になった。