【患者】60代前半、女性
【主訴】右の股関節周りが痛い
【既往歴】右寛骨臼回転骨切り術(約30年前)
【現病歴】レントゲン検査にて股関節臼蓋形成不全があり、変形性股関節症と診断され、約30年前に回転骨切り術を受けた。術後、痛みは減少したが残存していた。約4年前から痛みが増加しており、特に、椅子やベッドから立ち上がる時や歩行開始時の痛みが気になる。現在、痛みが強い時には鎮痛剤の内服や坐薬を使用している。レントゲン検査は、手術を実施した病院にて定期的に行っている。
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【現症】ベッド端座位からの立ち上がり動作で痛みあり。また、歩行開始後の最初の数歩で痛み(以下、starting pain)あり。歩行時はT字杖を使用。仰臥位での右股関節他動可動域(以下、他動ROM)は屈曲約70°(痛みなし)・外転約20°(股関節前方痛あり)。
【検査所見】他院レントゲンにて、右大腿骨頭に骨破壊・壊死像なし。
【治療と結果】仰臥位にて、普段痛みを感じる右股関節前方を触診すると、健側と比べて筋腱の緊張が高かった。レントゲンにて骨壊死等の病態が無いことから、痛みの要因は、股関節前方にある筋腱の緊張亢進によるものと考えた。
まず、普段痛みを感じる部位に緩消法を実施。約2分後、筋弛緩を確認。ベッドからの立ち上がり動作をしてもらうと、痛みは10から7(NRS改変)と小さくなった。
効果があったため、続けて仰臥位で同部位に実施。約5分後、ベッドからの立ち上がり動作をしてもらうと、痛みは10から5(NRS改変)と小さくなった。更に同部位および周囲の筋腱緊張が亢進していると触診で感じる部位に約10分実施。
ベッドからの立ち上がり動作をしてもらうと、痛みは10から0(NRS改変)と消失した。starting painも消失しており、歩きやすくなったと喜んで頂けた。