【患者】60代後半、女性
【主訴】歩く時に両方の股関節が痛い
【既往歴】特記事項なし
【現病歴】約5年前、特に誘因なく両股関節痛(右>左)が発生。近医整形外科を受診し、レントゲン検査にて両変形性股関節症の診断を受けた。以降、痛みが強い時は、市販の湿布を貼って過ごしていた。約2ヶ月に自宅で掃除中に両股関節とも痛みが悪化し、継続している。
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【現症】安静時痛なし。明らかな疼痛性跛行あり。右股のほうが痛みが強く、歩行開始時が特に痛い。両股とも鼠径部に痛みを感じる。
【検査所見】レントゲン検査にて、両変形性股関節症(進行期)を認める。踵臀部間距離(heel buttock distance:以下、HBD)は、右2cm・左5cm。
【施術と結果】仰臥位にて一番痛みを感じる鼠径部を触察すると、両側とも筋腱の緊張が高いと感じる部分があった。レントゲン検査にて骨折・骨壊死・骨破壊の所見を認めず、また、HBDの結果より両大腿四頭筋に拘縮が存在するため、本症例の痛みは股関節周囲の筋腱群の緊張亢進によるものと考えた。
まず、痛みがより強い右股関節から施術を開始。施術者①が右鼠径部の筋腱の緊張が最も高く感じる部分に緩消法を実施。約2分後、同部の筋腱群の弛緩を確認。歩行開始時痛は10から8(NRS改変)と小さくなった。また、主観で、左右の痛みの強さがほぼ同じになった、とのこと。
効果があったため、続けて同部位を含め右鼠径部全体に実施。約10分後、歩行開始時痛は10から5(NRS改変)と半減した。この時点で左股関節痛のほうが気になるとのことで、左股関節の施術に移った。施術者②が左鼠径部の筋腱の緊張が最も高く感じる部分およびその周囲に緩消法を実施。約10分後、同部の筋腱群の弛緩を確認。歩行開始時痛は10から5(NRS改変)と半減した。
それ以降は両鼠径部への施術で痛みの変化がなかった。両鼠径部の筋腱群の緊張亢進は、腰部側面の筋緊張亢進と関連があると考えたため、施術者①が左右腰部側面に緩消法を実施。約10分後、同部の筋弛緩を確認。腰部側面の小指押圧深は施術前の左右約0.5cmから約1.5cmとなっており筋弛緩を得られていた。歩行開始時痛の更なる減少はなかったが、主観で、先程よりも脚が出しやすく歩きやすくなった、とのことだった。客観的に見ても、歩容状態が改善し疼痛性跛行が軽減していた。
【その他】本症例は、当院にて、緩消法認定技術者の①渡邉・②筆者の2名で順次施術を行った症例であり、施術者を変更しても緩消法の効果を確認出来た症例であった。尚、本症例の検査は②が行った。