【患者】30代後半、女性
【主訴】右の首から肩にかけて激痛が走る、軽い吐き気もする
【既往歴】急性腰痛症、アキレス腱断裂
【現病歴】10代前半から頭痛があり季節の変わり目には必ず頭痛を起こしていた。首と肩の凝りも幼いころより感じていた。成人して事務職に就いて数年で腰痛が発生。急性の腰痛も繰り返しており、慢性的な痛みには10年以上苦しめられている。30代に入った時に事故でアキレス腱を断裂、その後、更に体調が悪化した。来院3日前に首に痛みを感じ、一晩明けたらさらに痛みが激しくなり、肩まで痛みが広がってきた。
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【現症】来院時、頚部を動かすと激しい痛みが出るため、関節可動域(以下・ROM)を確認しても動かせない方向がある状態だった。頚部の自動ROMは右外旋約0°・右側屈約0°、頚部右側頚椎3番高位周辺から右肩甲骨上角から肩峰周辺に安静時痛があり、来院時もやや吐気もあった。発痛個所には目視により若干の赤み腫れのようなものがあるように感じた。触察しても痛みは出ないがやや熱感らしきものが感じられる。
近医整形外科への受診はしていない。
【施術と結果】本症例は、3日前に発生した激しい痛みである。近医への受診をしていないこと、目視や触察により発痛個所に急性の危険があること念頭に置く。本人には急性の可能性を伝え、本施術後に近医整形外科への受診を勧める。発痛原因が筋の損傷の場合、発痛個所への直接の施術は痛みの悪化に繋がるために避ける。痛みの最も激しい個所は頚椎5番から7番周辺との訴えの為、関連する腰部の筋を施術箇所とする。腰部を触察すると腰椎右側2番と1番の周辺に硬結のようなものを確認、軽い押圧を加えると若干の痛みがあるとのこと。施術箇所は腰椎右側2番と1番の周辺とし施術を開始する。約1分の施術が経過した時点で本人より首が軽くなってきた、と報告を受ける。筋の弛緩も確認できたので、安静時痛の変化を再確認すると痛みは10から6(NRS改変)まで小さくなった。頚部の自動ROMは右外旋約20°・右側屈約15°となり、改善の傾向が見られた。まだ痛みが残っている為、引き続き腰椎右側2番と1番の周辺に施術を継続した。
後日、頚部の痛みも吐き気もおさまった、と報告を頂いた。
急性の可能性がある症例であったが、危険な部位を避けても筋弛緩により痛みの軽減とROMの改善が確認された症例であった。