【患者】30代後半 女性
【主訴】約7か月前から右股関節に痛みを感じるようになってきた。
【既往歴】―
【現病歴】約7か月前から、起居動作時に右股関節痛が発生。近医整形外科を受診し、先天性臼蓋形成不全症と診断を受けた。今は特に治療をすることはなく、痛くなったら再来するよう指導を受けたが、筋力低下や軟骨の変性が進行すると将来的に変形性股関節症となり、人工股関節置換術などの治療が必要となる場合があると言われ、本人の意向により進行予防として2週間に1度のペースでリハビリに通院し、股関節周囲筋の筋力トレーニングやストレッチなどを行っている。
続きを読む
【現症】胡坐をかくと右股関節前方の鼡径部周辺に痛みが発生する。右股関節外旋可動域(以下、ROM)制限あり。両臀部周辺と第3腰椎(以下、L3)から第4腰椎(以下、L4)棘突起周辺に痛みあり。
【施術と結果】本症例は、胡坐をかいたときに右股関節前方の鼡径部周辺に痛みを訴えていることから、外腹斜筋周辺の筋緊張が要因と考えた。
はじめに、仰臥位にて痛みを訴える右鼡径部周辺の筋緊張部位に緩消法を約3分施術し、筋弛緩を確認した。結果、痛みを訴える位置が右股関節の外側に移動した。次に、痛みを訴える場所を確認しながら筋緊張部位に緩消法を約4分施術し、筋弛緩を確認した。結果、胡坐をかいたときの痛みが10から4(NRS改変)と小さくなった。
痛みを訴える位置が右股関節の深層部となり、また、両臀部周辺とL3からL4棘突起周辺に痛みもあるとのことから、痛みの要因は大腰筋の筋緊張が影響していると考えた。腸骨稜の縁や腰部の深層部まで筋弛緩する必要があることをお伝えし、腰部の施術に移行した。
まず、椅子座位にて両臀部の痛みを訴える直上の腸骨稜際に緩消法を約5分施術し、筋弛緩を確認した。結果、両臀部の痛みの変化はなかったが、胡坐をかいたときの右股関節外旋ROMが大きくなり、痛みが10から3(NRS改変)と小さくなった。次に、腰部側面の筋緊張部位に緩消法を約10分施術し、筋弛緩を確認した。結果、胡坐をかいたときの痛みが10から1(NRS改変)と小さくなった。少し違和感が残存する程度となり、起居動作が楽になったとの報告を受けた。
将来手術が必要かもしれないと不安な気持ちで過ごしていたが、筋弛緩をすれば股関節の痛みは改善できることをご理解いただき、最後は安堵の表情を浮かべていた。