【患者】60代前半、女性
【主訴】座っていると右の股関節が痛くなってくる。長時間立っていると股関節に激痛が走る。
【既往歴】―
【現病歴】3ヶ月前、歩行時に右鼡径部に疼痛が発生、現在は消失しているが座位の状態で右鼡径部に違和感が出始めている。そのうち消えるだろうと放置していたところその後、座位にて右鼡径部に痛みが出始めた。3ヶ月前、30分程は座り続けられたが、現在は5分程で痛みが激しくなり座っていられない。病院には行かず我慢していたが痛みに耐えられなくなり当院へ来院した。
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【現症】立位にて主訴を聴いた後、続きの身体の状態を話している間、痛みの発生確認のため座位を持続してもらう。ほぼ主訴の通りに3分程で痛みを訴え始め、5分程で座っていられなくなった。その後、立位に体勢を変えるが、動作時に多少痛みの増加が見られた。約5分座位後の10歩程の歩行には支障はなかった。
【施術と結果】本症例は、病院での検査を受けていないことから右股関節周辺に損傷や関節に異常がある可能性を視野に入れ施術を進めた。立位動作時、右股関節に力を入れた際に痛みが発生していることから、筋損傷か後遺症であることも考えられた。
触察にて熱感や肥大のようなものは感じ取れなかったが、万が一のリスクを避けるため発痛部位である右鼡径部への直接の施術は避け、痛みの発痛部位に関連する筋への施術を行う。腹直筋・腹斜筋群の腸骨稜付着部周辺の筋緊張が鼡径部の痛みに関わることが多いため、右側腸骨稜の前側・腹斜筋群の付着部周辺を施術部位とした。座位での施術は避け、立位での施術を行う。2分程で腹斜筋周辺部の筋弛緩が押圧深1cmほど進んだので、痛みの確認のため座位の体勢になってもらう。本人の体感として立位から座位への動きがスムーズになる感覚はあるとのこと。
その後、座位の姿勢を維持したが3分は痛みなし。座位にて3分経過したときに違和感と疼痛が現れたが、主観にて座っていられないほどではなかったので、座位の状態で施術を続ける。立位時の施術部位にて痛みの変化が見られたので、立位時の施術部と同一部位への施術を継続する。施術前は5分を超えたら座っていられなかったが、施術中に痛みの増大はなく座位3分後の違和感と痛みが維持している状態だった。座位時3分後の違和感と疼痛の変化はなかったが、5分後の座っていられない疼痛の変化は確認できた。
最終的には20分以上の座位でも座っていられるようになった。本人からは座っての痛みはさほどの変化はないが、20分以上座っていられるようになったことが嬉しく、痛みが消える希望が持てた、話していた。