【患者】50代後半、男性
【主訴】腕を水平の高さまで挙げると激痛が走る。朝、起きた時に痛みで肩が動かない時がある。腕を水平まで前に挙げると胸の痛みがあり食事がしずらいのが生活上の悩み。
【既往歴】急性腰痛症、尿管結石
【現病歴】20年以上前から急性腰痛を繰り返しており、1週間動けないことも度々あった。
勤務先の健康診断にて重度高血圧や腎臓の異常が発見され治療を受けていた。この頃から腰だけでなく上半身に疼痛が広がり始めていた。
10年前に腎臓結石を患い緊急手術をした後、身体の状態が悪化し投薬治療(降圧剤・向精神薬、他1種)を続けていたが、現在投薬は終了し、定期的に服用しているのは腎臓関連の薬1種のみまで回復した。腰部の痛みは治まってきたが1年前より右肩部に痛みが発生し、腕を挙げるたびに激痛が出始め、就寝姿勢によっては起床時に肩部の激痛で動けなくなることがある。
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【現症】来院時、肩部に安静時痛なし。肩関節外転の自動関節可動域(以下・ROM)約90°で肩関節周辺・上腕内側に疼痛を訴え、肩関節水平屈曲自動ROM約100°で大胸筋鎖骨周辺に疼痛を訴えた。
肩関節外転時に、大円筋・広背筋上腕骨付着部である上腕骨小結節稜周辺に筋緊張の影響と考えられる膨隆が確認できた。
【施術と結果】本症例は、左上肢挙上時の肩関節から上腕内側にかけての疼痛であり、上腕骨小結節稜周辺の筋緊張により肩関節の動作が妨げられることで、痛みやROMの制限が出ていると推測し、筋弛緩部位は上腕骨小結節稜周辺を肩関節周辺の疼痛を訴えない可動域の範囲で緩消法を約1分行い、筋弛緩を触知できた。結果、現症で訴えていた肩関節外転の自動ROM約90°で、肩関節周辺・上腕内側の痛みは10から0(NRS改変)となった。
次に本人の生活上の悩みと訴える肩関節水平屈曲時の大胸筋周囲の痛みは、大胸筋周辺の筋緊張が要因と考え、大胸筋を触察すると鎖骨遠位約1/3周辺に筋に緊張が確認し、緩消法を約2分行い、筋の弛緩を確認した。結果、肩関節外転のROM約120°となり、肩関節周辺・上腕内側の疼痛は10から4(NRS改変)となった。今回の症例は患者さんの要望で短時間の施術であったが、十分な効果が出たと考えられる。