【患者】60代後半、女性
【主訴】歩くと膝が痛くなる。一歩目から膝の痛みがでる。
【既往歴】―
【現病歴】発症時期は記憶にないので何年続いているのか詳細は不明。学生時代は本格的にスポーツに打ち込んでいた。スポーツをしている学生時代に大きな怪我をすることなく成人し、その後は趣味程度のスポーツをしていた。
いつのころからか歩行時に膝に疼痛が表れ始め、現在では歩くときは常に疼痛を感じるようになっている。歩行時間によって疼痛が徐々に増すということはなく、本人の自覚では30分程は同じような痛みの状態で歩くことはできるとのこと。
近医整形外科に受診し、両膝の検査を受けた際、多少の変形はあるが年相応であり、痛みが出るほどではないから問題ない、と言われている。
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【現症】来院時、目視により歩行を確認すると、股関節・膝関節の動きにくさと歩行速度の遅さを感じた。足がつけないほどではないが、右足に重心が掛かると痛みが大きいように見えた。本人の自覚として左右の膝に痛みが出てくるが、右膝のほうが痛みは大きく、特に膝蓋骨上部から大腿部にかけて痛みが出てくるとのこと。
【施術と結果】歩行時、足を地面に付いた際に痛みが発生することから骨膜の損傷を疑ったが、近医整形外科にて問題無しとされているため軟骨や骨の異常はないとし施術を進めた。大きな怪我はしたことがない、との話だが、過去にスポーツを本格的にされていたことから、学生時代の小さな傷や筋への負担が古傷になっている可能性を考慮した。
歩行が出来ないほどの痛みではないため、通常の慢性的な痛みの原因と同じく、筋の緊張によるものとして施術を開始する。痛みが大きい右膝蓋骨周囲の筋を触察し、可動の確認を行う。膝蓋骨・大腿直筋周辺の筋に硬結が確認できる。膝関節の可動に若干の動き難さを感じるが可動域に問題ないと判断。歩行時の右膝の痛みの発生部位と触察時の筋緊張部がほぼ一致したため施術部位を膝蓋骨・大腿直筋周辺の筋とした。2分、緩消法を行い、筋の弛緩を確認できたため、歩行時の疼痛の状態を確認する。5歩まで右膝の疼痛が消失した。その後、歩行を続けると疼痛が発生するが施術前の疼痛と比べると10から8(NRS改変)へと減少した。
発痛部位への施術では痛みの減少や効果が薄いと判断、施術部位を変更する。膝関節周囲の疼痛には大腿部の筋が関わっており、特に起始部である上前腸骨棘周辺の筋緊張により起こっていることが多い。左右の上前腸骨棘周辺の筋を触察すると筋緊張が多く、今症例の膝関節の痛みに関わっていると推測し上前腸骨棘周辺に緩消法を行う。左右上前腸骨棘・縫工筋付着部周辺の筋へ緩消法を施し、筋の弛緩が触知されたため再度、歩行の確認を行う。10歩目まで痛みは消失。その後の疼痛は10から5(NRS改変)と減少した。
痛みの減少を本人が自覚するとともに、歩行時の膝・股関節の動きもスムーズになったと報告を受けた。