【患者】60代前半 女性
【主訴】約3年前から左股関節の付け根の痛みが酷く、歩くときに左足が持ち上がらないため、びっこを引きながら歩いている。左股関節を庇って歩くため、最近は右脚の方も悲鳴を上げている。痛くなりそうなところは前もって湿布を貼っている。
【既往歴】変形性膝関節症。約5年前から高血圧症及び糖尿病。
【現病歴】約5年前から立ち仕事を始めたことをきっかけに左股関節痛を発症。約3年前から増悪し、近医整形外科にて変形性膝関節症のステージⅣと診断され、現在リハビリを行っている。痛みが増悪し生活困難になる場合は手術も視野に入れている。整体での電気治療やマッサージも併用して行っている。知人から当院を紹介され来院。
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【現症】仰臥位による左股関節可動域(以下、ROM)は自動屈曲約0°であり、他動屈曲約10°で左恥骨筋周辺に限局した痛みが出現。
【施術と結果】本症例は、歩行時に左恥骨筋周辺に限局した痛みが出現するため、左恥骨筋周辺の筋緊張が痛みの要因と考えた。
はじめに、仰臥位にて左恥骨筋周辺を触察したところ、限局した疼痛部位に筋硬結の様なしこりを確認した。筋緊張部位に緩消法を約2分施術し、筋弛緩を確認した結果、左股関節ROMは他動屈曲約15°となった。症状に変化があったため、引き続き同部位の筋緊張部位に緩消法を約3分施術し、筋弛緩を確認した結果、筋硬結の様なしこりは確認できなくなり、左股関節ROMは他動屈曲約20°となった。歩行時痛を確認してもらったところ、左恥骨筋周辺の限局した痛みは10から3(NRS改変)となった。「片足に体重をかけても痛くない」と拍手をして喜んで頂けた。
左恥骨筋周辺の痛みが減少したことから、左大腿部前面や左膝関節周辺等の別部位の痛みが気になるようになってきたとの報告を受けた。それらの痛みを誘発しているのは、左下前腸骨棘や左上前腸骨棘周辺の筋緊張による血行不良と考え触察したところ、筋緊張を確認した。椅子座位にて緩消法を約3分施術し、筋弛緩を確認した結果、左大腿部前面や左膝関節周辺の歩行時痛は10から3(NRS改変)となった。
普段から左股関節を庇って生活しているため、他部位への負荷がかかりあちこちに痛みが発生するとのこと。これらは腰部筋群の筋緊張による血行不良が痛みの要因と考え腰部側面を触察したところ、筋緊張を確認した。筋緊張部位に緩消法を約10分施術し、筋弛緩を確認した。結果、歩行時痛は10から2(NRS改変)となった。
今までびっこを引いて歩く癖がついてしまっているため、体重をかけて歩行することはできなかったが、今までにない痛みの変化を感じ、「筋肉が痛みの要因であれば手術は必要ないかもしれないね」と大変喜んで頂けた。