【患者】40代後半、女性
【主訴】両足に力が入らない
【既往歴】脊髄梗塞(約1年前に発症し、他院で入院治療)
【現病歴】約1年前、自宅で掃除中に、特に誘因なく心窩部と背部に痛みが発生。その数分後に右下肢脱力感が発生し、歩行困難となり救急要請。近医総合病院に搬送された。精査の結果、脊柱MRIにて第5~10胸椎高位の脊髄内に異常信号を認め、脊髄梗塞と診断された。その2日後に、左下肢にも不全麻痺が発生した。以後、車椅子の生活となり、約10ヶ月入院治療を行った。退院後は、入院していた病院の関連施設にて社会復帰のための通所リハビリを行っている。
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【現症】両下肢に痛みはないが、不全麻痺が残存。移動には、手動車椅子を使用。日常生活動作は、移乗に際し部分介助を要する時あり。
【検査所見】両下肢の徒手筋力テスト(以下、MMT)では、概ね右が1~2、左2レベル。皮膚表面の知覚鈍麻の程度は、両下肢とも主観で正常の約10~30%。
【施術と結果】椅子へ移乗し、座位の状態で両下肢の力の入り具合を確認。両大腿部は軽度持ち上げることはできるが足底を完全に床から離すことができない状態。また、両足部とも主観でほぼ踏ん張れないとのこと。腰部から両下肢の触察では、腰部全体に筋緊張を認め、押圧深は左右とも2.5cm。そこで、一番の主訴である両下肢不全麻痺による筋力低下に対して、腰部の筋弛緩により、下肢への神経圧迫を減少させ血流を少しでも増加させることで、筋力改善が期待できないかと考えた。
まず、施術者①が腰部左右側面へ緩消法を実施。2~3分では変化が無かったが、約10分後、両足部の力の入り具合を確認してもらうと、主観にて、両下肢とも先程よりも踏ん張れるとのこと。特に左は施術前と比べ200%ぐらい力が入る感じがするとのことだった。効果があったため、続けて施術者②が腰部全体に実施。約15分後、腰部の筋緊張の軽減を確認。押圧深は左右とも4.5cmに変化。再度、両足部の力の入り具合を確認してもらうと、先程よりも更に踏ん張ることができ、また、両下肢とも足底を完全に床から離すことが可能となった。
主観では、左下肢は施術前と比べ300%ぐらいの力の入り具合になったとのこと。右下肢も力が入るようになったとのことで、特に足部は左の80%程度力が入る感じ、と喜んで頂けた。両下肢皮膚表面の知覚鈍麻の程度には変化が無かった。
【考察】両下肢不全麻痺に対して、腰部の施術で下肢筋力が改善した一例を報告した。緩消法は正しく行えば副作用がない施術法であるため、麻痺による筋力低下の症例に対しても、筋力改善目的で試してみる価値があると思えた症例であった。
【その他】本症例は、当院にて、緩消法認定技術者の①筆者・②渡邉の2名で順次施術を行った症例であり、施術者が変更しても緩消法の効果を確認出来た症例であった。尚、本症例の検査は①が行った。