【患者】70代前半、女性
【主訴】左の手首が固まって痛い。指に力が入らずペットボトルが持てない。
【既往歴】特記事項なし
【現病歴】数年前から認知症がある。約3ヶ月前、畳の上で変な寝方をした後に、左前腕伸側に水疱が複数出現し、手関節と手指が動かなくなった。近医整形外科を受診し、橈骨神経麻痺の診断。水疱は近医形成外科で加療。圧迫阻血によるもの、とのこと。水疱は約2週後に治癒。その後、手関節背屈保持装具を作製し、約1ヶ月装着した。
続きを読む
【現症】左手関節の自動可動域(以下、ROM)は、屈曲・伸展ともに0°。また、握手による握力確認では、ほぼ握ることが出来ず、ペットボトルは持ち上げられない状態。
【検査結果】単純X線写真では病的所見なし。
【施術と結果】本症例は、手関節の拘縮と痛みがあり、また、手指に力が入らず握手が不可だったことから、左前腕の屈筋群及び伸筋群の拘縮による筋緊張の亢進が痛みの要因の一つと考えた。触察では、前腕の屈側・伸側ともに中央より約3横指近位部までの範囲(以下、部位A)に強い筋緊張を確認したため、部位Aを施術開始箇所とした。
まず施術者①から施術開始。約10分で部位Aの筋弛緩を確認。左手関節の伸展ROMは約10°に改善した。また、痛みに関しては、認知症にてNRS改変での確認が困難であったため同席の夫の見た印象と会話で確認したところ、減少した様子だった。握手での握力確認では、わずかな改善が見られた。変化が見られた事から部位Aへの施術継続を決定した。
次に施術者②へ交代。施術開始から約15分で部位Aの筋弛緩を確認。伸展ROMは変化しなかったが、屈曲ROMは約5°に改善した。握手での握力確認では、施術者の主観で10%以上の改善を感じたため、ペットボトルを掴んでもらい確認すると、持ち上げる事が可能となった。
同席の夫から「ずっと左手は握力がなかったのに、ペットボトルを持ち上げられたのはすごい。」と驚きの報告を受けた。
この後、約20分の施術時間があったが、顕著な変化は見られなかった。筋緊張残存部分がある事と拘縮による筋力低下も考えられる為、緩消法による施術を継続してみると良いと伝え施術を終了した。
【その他】本症例は、当院にて、緩消法認定技術者の①渡邉②秦の2名で順次施術を行った症例であり、施術者を変更しても緩消法の効果を確認出来た症例であった。尚、本症例の検査は施術者②が行った。