【患者】10代後半、男性
【主訴】左の鼠径部が痛くて歩けない
【既往歴】特記事項なし
【現病歴】約2週間前、特に誘因なく左鼠径部に痛みが出現し、徒歩通学が出来なくなった。近医救急病院にて種々の検査を行うも異常が無く、原因不明と言われた。鎮痛剤を処方され内服しているが改善しない。
続きを読む
【現症】左鼠径部全体に痛みあり。特に中央部に強い。腫脹・熱感・皮下出血斑なし。Patrick肢位にて同部に痛みあり。
【検査結果】MRIにて異常所見なし。
【施術と結果】本症例の痛みは特に誘因なく発生しており、また、目視と触察により腫脹・熱感等は無いため、痛みを訴える部位付近の筋腱群の緊張亢進によるものと考えた。まず、左鼠径部に直接施術をすることを考えたが、母指指尖部による押圧時に、「痛みの箇所はまだ奥の感じがする」と言われた。従って、施術開始箇所を、その部位の筋腱群と繋がりがあると思われる左上前腸骨棘付近(以下、部位Ⅰ)とした。部位Ⅰも触察にて筋緊張が確認できた。
まず、施術者①から開始。約30秒後に部位Ⅰの筋弛緩を確認できたが、痛みに変化はなかった。よって、施術箇所の変更を検討。部位Ⅰの近くの腰部左側側面(以下、部位Ⅱ)の筋緊張に大きな要因があると考え、部位Ⅱの筋緊張部位へ施術する事とした。施術者①が続けて実施。約5分で筋弛緩を確認。痛みは10から4(NRS改変)と小さくなった。痛みに変化があった事から、部位Ⅱへの施術を継続する事とした。
次に施術者②に交代し、部位Ⅱの施術を継続。約5分で筋弛緩を確認。痛みは10から3(NRS改変)と小さくなった。しかし、それ以降は、更に筋弛緩は得られるものの、痛みの変化は見られなかった。
痛みの減少により歩容状態はかなり改善し、疼痛性跛行はほとんど消失したが、更なる痛みの改善には、部位Ⅱの深部を含めた腰部筋群全体の筋弛緩が必要と考えられる。
【その他】本症例は、当院にて、緩消法認定技術者の①筆者②渡邉の2名で順次施術を行った症例であり、施術者を変更しても緩消法の効果を確認出来た症例であった。尚、本症例の検査は施術者①が行った。