【患者】30代後半、女性
【主訴】腰の右側がすごく痛い。立ち上がったり歩く時が特に激痛。
【既往歴】急性腰痛症(中学の陸上部時に数回)
【現病歴】中学時代、部活中に数回ギックリ腰(急性腰痛症)になり、それ以降、時々腰痛が出現していた。成人後、介護職に就くようになったが、慢性的な腰痛があった。仕事時はコルセットを装着することもある。約1週間前、仕事中に患者さんを抱えた時に、腰部右側に強い痛みが出現。鎮痛剤を内服して経過をみるが改善しないため、自宅近くの施術院に行くも改善なく、その後の仕事で腰痛が悪化した。職場の上司から整形外科での検査・治療を勧められたため来院。
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【現症】体動時、腰部右側に激痛があり、痛過ぎて涙目になっている。痛みが強く仰臥位になれない。立位よりも座位のほうが痛みはやや軽いとのこと。歩行時は約10cmずつしか足部を交互に前に出せない。
【検査所見】立位腰椎レントゲン検査にて明らかな所見なし。下肢神経学的異常なし。
【治療と結果】痛みは第3・4腰椎高位の棘突起から右側に約4cm~10cmの範囲の筋群と右仙腸関節近位部にあり。
視診上、疼痛部には腫脹・皮下出血斑がなく、また、レントゲン検査にて骨性異常所見がないことから、本症例の痛みは、腰部筋群の筋緊張亢進のためと考えた。そこで、まずはリハビリ室にて理学療法士(以下、PT)による徒手療法を勧めたが、担当PTより「痛みが強すぎて通常の徒手療法が行えない。仙腸関節の炎症も強いと思うので患部に触らずにまずは安静を保ちたい」との返答あり。しかし、体動時・歩行時に激痛があるため、ご本人に緩消法の概略を説明し、外来診察中の合間に筆者が緩消法を行うことにした。
触診では腰部左右の脊柱起立筋群・腹斜筋群が硬く、腰部左右側面の小指押圧深は共に約1cmだった。腰部筋群の筋緊張亢進は、腰部左右側面の筋緊張亢進と関連があると考え、まずは腰部左右側面から緩消法を実施。約5分後、同部の筋弛緩を確認。歩行時痛は10から7(NRS改変)と小さくなった。効果があったため同部に継続実施。約5分後、歩行時痛は10から5~6(NRS改変)と小さくなった。更に約10分継続し、更なる筋弛緩を確認。歩行時痛は10から4に減少した。腰部左右側面の小指押圧深は共に約2cmに改善していた。主観で、「歩く時に腰がピキッとなっていたのがなくなった。脚が動かしやすくなった」とのこと。歩容状態も施術前より改善し、約30cmずつ足を交互に前に出せるようになった。
リハビリ室にて「今日は対応できない」と言われ悲愴感があったが、緩消法での施術後は、涙目が消失し笑顔になって頂けた。
【考察】今までのリハビリ範疇での徒手療法では手が出せない痛みでも、緩消法を用いることで、主訴を改善させることができた。緩消法は筋線維を傷つけない治療法であるため、現在のリハビリ徒手療法で対応できない症例に対しても、有効な治療法の一つであると考える。