【患者】50代後半 男性
【主訴】交通事故の時に、右手首を痛めてから握力まで落ちてしまった。強く握ろうとすると痛い。
【既往歴】特記事項なし
【現病歴】約11ヶ月前に交通事故(原付バイクで走行中、対向車の普通車と衝突)により受傷。当日、家族の車で近医救急病院を受診。頭部には硬膜下血腫があり安静を要したが、手は打撲の診断。MRI検査では、大菱形骨・三角骨・豆状骨周囲に腫れと骨挫傷の所見を認めた。約1ヶ月半の安静後、近医整形外科にて右手の痛みと握力低下に対して通院リハビリ開始。現在も行っているが、受傷以来、握力を必要とする動作時に痛みを伴い、握力の低下が持続している。
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【現症】握手などで強く握ろうとすると、右前腕遠位部の橈側および尺側に痛みを伴い、力が抜けてしまう。通常の握力は45kg〜50kg程度であるのに対し、現在は約20kgまで低下している。
【施術と結果】本症例は、事故による受傷後、前腕筋腱群に癒着様の状態があるものと考えられた。痛みを訴える前腕遠位部の筋緊張亢進を触察にて確認し、施術を開始した。
まず施術者①が前腕近位尺側を施術した。約5分の施術で弛緩を触知し、痛みは10から5(NRS改変)と小さくなったと報告を受けた。
次に施術者②に交代し、前腕近位橈側を施術した。約5分の施術で弛緩を触知し、痛みは10から5(NRS改変)と小さくなったと報告を受けた。
続いて施術者①に交代し、前腕近位尺側を施術した。約15分の施術で弛緩を触知し、痛みは10から0(NRS改変)と消失したと報告を受けた。この時点での握力は約30kgであった。
次に施術者②に交代し、前腕近位橈側を施術した。約15分の施術で弛緩を触知し、痛みは10から2(NRS改変)と小さくなったと報告を受けた。この時点での握力は約35kgとなった。
【その他】本症例は、しん整形外科にて緩消法認定技術者である渡邉(施術者①)、秦(施術者②)の2名で順次施術を行った症例であり、施術者を変更しても緩消法の効果を確認できた症例であった。
【考察】本症例は、交通事故後の慢性的な握力低下と痛みが、前腕筋腱群の局所的な筋緊張亢進などによって引き起こされていたと考えられる。短時間の施術で痛みが大きく軽減し、握力も約35kgまで回復したことから、筋緊張の弛緩が症状改善に有効であることが示唆される。