【患者】80代後半 男性
【主訴】「一年前に転倒してから、左足の痺れが強くなり歩くのが辛い。」
【既往歴】後縦靱帯骨化症
【現病歴】約1年前に畑仕事中に後方へ転倒し、頭部および頚部に受傷。その後、下半身に痺れが発症した。
続きを読む緩消法研究会では、緩消法施術による症例報告を掲載しています。
【患者】80代後半 男性
【主訴】「一年前に転倒してから、左足の痺れが強くなり歩くのが辛い。」
【既往歴】後縦靱帯骨化症
【現病歴】約1年前に畑仕事中に後方へ転倒し、頭部および頚部に受傷。その後、下半身に痺れが発症した。
続きを読む【現症】特に左半身に強く発現している痺れによる歩行時の違和感を訴えていた。痺れの症状は、鼠径部付近から足先にかけて感じられるとの訴えであった。後縦靱帯骨化症の診断がついた時点で左半身の動かしにくさはあったものの、今回の症状悪化については、近医にて後縦靱帯骨化症の悪化ではないとの診断がなされている。
歩行に関しては、歩幅が約12cm、180°の方向転換に5回の踏み替えを要する状態であった。
【施術と結果】本症例は、現症に記載の通り、後縦靱帯骨化症の悪化ではないとの診断を受けていたものの、転倒による頚部への受傷があったことから、まず頚部背面から左側面にかけてを施術開始箇所とした。しかし、約5分間の弛緩では顕著な変化が見られなかったため、次に左鼠径部から足先にかけての痺れという訴えに基づき、左鼠径部付近の筋緊張、およびその要因と考えられる左上前腸骨棘周辺の筋緊張を触知し、次の施術箇所とした。
左上前腸骨棘周辺への施術開始から約5分で筋緊張の弛緩が触知され、左大腿部の痺れは主観で10から0と消失し、痺れの範囲は左膝関節から左足趾尖部にかけてと狭くなったとの報告を受けた。まだこの段階では歩行に変化は見られなかったが、痺れの範囲に変化が見られたことから、同箇所への施術継続を決定した。続けて約2分間では変化が見られなかったため、痺れの範囲が左膝関節から左足趾尖部になったことを踏まえ、左膝窩付近へ施術箇所を移行することとした。
触察にて左膝窩付近に筋緊張を確認し、施術を開始した。約10分間の弛緩で痺れの強さは主観で10から5と半減したとの報告を受けた。歩行に関しては、歩幅が約20cmと大きくなり、方向転換は4回の踏み替えで可能となり、1回あたりの角度が増加した。また、本人からは「歩きやすくなった」との発言があり、同席のご家族からは「歩くのが速くなって歩きやすそう」と喜びの報告を受けた。
【考察】本症例は、緩消法が非侵襲性の施術であり、年齢や基礎疾患(難病を含む)に関わらず、筋腱群に緊張が確認できる限りにおいて、試みる価値があることを示唆する結果であると考えられた。