【患者】 70代 女性
【主訴】 約6ヶ月前から顔の左側に痺れを感じて、水を飲もうとしても、口が閉じないので、こぼれてしまう。
【現病歴】 約6ヶ月前に顔面神経麻痺を発症。近医にてベル麻痺と診断された。その後、症状の改善は乏しく、特に飲水時に左側の口輪筋麻痺によると思われる口腔閉鎖不全のため、水分の漏出を認める。
続きを読む緩消法研究会では、緩消法施術による症例報告を掲載しています。
【患者】 70代 女性
【主訴】 約6ヶ月前から顔の左側に痺れを感じて、水を飲もうとしても、口が閉じないので、こぼれてしまう。
【現病歴】 約6ヶ月前に顔面神経麻痺を発症。近医にてベル麻痺と診断された。その後、症状の改善は乏しく、特に飲水時に左側の口輪筋麻痺によると思われる口腔閉鎖不全のため、水分の漏出を認める。
続きを読む【現症】顔面神経麻痺(左側):安静時における顔面非対称、随意運動における運動麻痺(特に口輪筋の麻痺が顕著であり、飲水時の口腔閉鎖不全を認める)。H-B scale(House-Brackmann顔面神経麻痺評価スケール)による評価は未実施。
【施術と結果】本症例は、特発性顔面神経麻痺(ベル麻痺)発症後、口腔機能障害を呈している。画像診断等の詳細な検査結果は不明であるが、末梢性顔面神経障害に伴う症状と考えられる。
顔面神経への血流循環改善を目的とし、左側頚部の胸鎖乳突筋周辺に対し、緩消法を実施、施術開始から約5分後、施術部位の筋緊張の軽減が触知され、飲水時、口腔閉鎖の為、入力するのが施術前と比較して主観で1割改善し、口腔内への水分保持が可能になったと報告を受けた。
症状の改善傾向が認められたため、同部位への施術を継続した。施術継続から約15分後、患者は口腔閉鎖の改善を自覚し、飲水時の水分漏出は減少、口腔閉鎖入力は主観的に約5割程度まで改善したと報告を受けた。。
さらに約15分間の施術を追加した結果、患者は飲水時の水分漏出を自覚せず、口腔内への水分保持は良好となり、口腔閉鎖入力は主観的には約7割程度の改善を認めたと報告を受けた。
【考察】本症例は、ベル麻痺に伴う口腔機能障害に対し、顔面神経のへの血流に関係すると考えられる頚部筋への緩消法を試みた結果、比較的早期に症状の改善を認めた。顔面神経麻痺の原因は多岐にわたるが、本症例においては、頚部筋の緊張緩和による神経周囲の微小循環改善が、症状緩和に寄与した可能性が示唆される。
今回実施された徒手療法、緩消法は、非侵襲的な治療法であり、本症例の結果は、難治性の末梢性神経障害に伴う機能障害に対しても、病態によっては有効なアプローチとなる可能性を示唆している。
ただし、本報告は単一症例に基づくものであり、同様の治療効果が全てのベル麻痺患者に期待できるとは限らない。今後の症例集積と、医師と共に行う客観的な機能評価(例:H-B scale、嚥下機能評価など)を用いた検証が望まれる。