【患者】50代後半 女性
【主訴】「左耳が聞こえづらく、電話で話すことが、聞こえないので出来ない。」
【既往歴】特記事項なし
【現病歴】約5年前に耳鳴りが出現し、徐々に難聴が増悪した。約1年前からは聞き返しが多くなり、呼ばれても気づかないことがあった。特に左耳では電話通話が不可能となった。
続きを読む緩消法研究会では、緩消法施術による症例報告を掲載しています。
【患者】50代後半 女性
【主訴】「左耳が聞こえづらく、電話で話すことが、聞こえないので出来ない。」
【既往歴】特記事項なし
【現病歴】約5年前に耳鳴りが出現し、徐々に難聴が増悪した。約1年前からは聞き返しが多くなり、呼ばれても気づかないことがあった。特に左耳では電話通話が不可能となった。
続きを読む【現症】左耳単独での電話通話が困難であり、左耳のみでは日常会話の成立が極めて難しい状態であった。
【施術と結果】本症例は、耳鳴りから難聴へと進行した経過と「首左側が頻繁に凝って痛くなる」という訴えから、左耳裏から頚部左側にかけての筋緊張が要因であると推察された。触察にて健側と比較し、耳裏から頚部左側全体に強い緊張を確認した。
まず、難聴の変化が現れやすい耳裏周辺から施術を開始した。約3分で弛緩を触知し、患者からは「石のように硬い塊に触れられているような気がしていたが、軟らかくなったのがわかる」との報告を受けたが、この段階では聴覚の改善は確認されなかった。
施術箇所を徐々に頚部下部へ移行した結果、特に外頸動脈および内頸動脈周辺の弛緩において大きな変化が認められた。
頚部下部に対して施術を継続し、弛緩を確認したのちに予約担
当者との電話通話で聴取テストを行った。その結果、施術前は聴取不能であったが、約30分の施術後には多少の聞き返しはあるものの会話が成立した。また、施術前には聴取できなかった女性声の動画音声が聴取可能になったとの報告を受けた。
【考察】本症例は、5年間にわたり増悪し電話での会話が不可能という重度機能障害を呈していた難聴に対し、頚部、特に頸動脈周囲の筋緊張を弛緩させることで、短時間のうちに聴取不能から会話可能へと著明な改善が得られた点に意義がある。内耳への血流や神経伝達は頚部の筋緊張に大きく影響される可能性があり、本症例の改善は難聴の一部に機能的・循環的要因が関与することを示唆する。また、増悪傾向にあった症状が改善へ転じたことは、慢性的難聴に対する非侵襲的アプローチとして緩消法が有効である可能性を示す一例である。
また、本症例の改善について、予約担当である言語聴覚士から「勤務時代にこのような症例は見たことも聞いたこともない」との報告を受けた。臨床現場において一般的に改善が困難と認識されやすい難聴に対して、筋緊張の弛緩による機能改善が確認された点は、本手法の適応可能性を検討するうえで重要であることが示唆された。
【その他】患者より「緩消法で改善は可能か?」との質問があったため、「どこまで改善するかは不明だが、これまで増悪していた状態が約30分の施術でここまで改善した事実から、諦める必要はないのではないか」と説明した。頚部筋緊張の要因と考えられる腰部のセルフ弛緩を指導し、当日の施術は終了した。