【患者】60代前半、男性
【既往歴】―
【主訴】半年前、仕事中に手の上に物が落ちてきてから右の親指の痛みが引かない。
【現病歴】約6か月前、仕事中に落下物が右手の上に落ちたことにより受傷。近医整形外科を受診され、異常はないとのことだった。その後約1か月現場には出ず事務仕事をして安静にしていた。安静時の痛みは消失したが、作業時に痛みが引かず仕事ができないとのことで当院受診された。
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【現症】右母指球に安静時痛は確認できない。右母指中手指節関節(以下、MP関節)・指節間関節(以下、IP関節)同時屈曲動作にて痛みが強くなる。特に右母指掌側外転位からのMP関節・IP関節同時屈曲動作での痛みが強く、手で「4」を数える動作に困難を感じる。日常生活上の可動域制限は確認できなかった。
【施術と結果】本症例は、落下物が右手に落下したことにより痛みを訴えており、受傷時に右母指球に強い衝撃が加わったことで筋の過緊張が生じたことが痛みの一つの要因であると考えられたため、痛みを訴える右母指球周辺を触察したところ、広範囲に筋緊張を確認。
まず、右母指掌側外転位からのMP関節・IP関節同時屈曲動作での痛みが最も強いことから、右短母指外転筋周辺を緩消法にて約1分弛緩したところ、右母指掌側外転位からのMP関節・IP関節同時屈曲動作での痛みが10から5(NRS改変)となった。
痛みに変化が確認できたため、引き続き同部位を緩消法にて約1分弛緩したところ、右母指掌側外転位からのMP関節・IP関節同時屈曲動作での痛みが10から2(NRS改変)となり、手で「4」を数える動作が簡単にできるようになったとご報告を受けた。ここで、右母指MP関節屈曲動作の方が痛みが強く感じられるようになったため、右母指内転筋周辺の筋緊張へと施術部位を移行した。緩消法にて約1分弛緩したところ、右母指MP関節屈曲動作での痛みが10から7(NRS改変)となった。
さらに同部位を緩消法にて約2分弛緩したところ、痛みが10から3(NRS改変)となった。ここで、右母指球の筋緊張が広範囲に及ぶことと、腰部の筋緊張が肋骨を下方に引き下げる作用を生じ、さらに上肢の筋緊張を誘発することから右母指球の筋緊張が生じると考えられたため、腰部側面を触察し、筋緊張を確認。緩消法にて約15分弛緩したところ、痛みが右母指MP関節屈曲動作及び右母指CM関節尺側内転動作での痛みが10から0(NRS改変)と消失した。「仕事ができなくて困っていた。これで仕事ができる。」とお喜びの声をいただいた。