【患者】50代後半、女性
【主訴】両方の股関節と太ももの外側が痛い
【既往歴】特記事項なし
【現病歴】約3年前、特に誘因なく両股関節に痛みが発生。特に2年前から痛みが酷くなり、両大腿部まで痛くなった。特に右が痛い。近医整形外科を受診し、レントゲン検査にて両変形性股関節症を指摘された。特に右は人工股関節置換術(以下、THA)が必要と言われた。手術はしたくないため他院にて保存的加療を行っているが、まだ明らかな痛みの軽減がない。
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【現症】椅子からの起立動作や歩行荷重時に、両股関節前方から両大腿部外側にかけて痛みあり。痛みは右の方が強い。両股関節可動域(以下、ROM)は、他動(右/左)で、屈曲約60°/約70°、外転約30°/約35°、内転約-5°/0°。
【検査所見】持参レントゲン写真にて、両変形性股関節症(進行期)あり。
【治療と結果】まず仰臥位にて、両股関節前方の痛みを感じる部分を触診すると、鼠径部正中から外側にかけて特に筋緊張が高かった。 まず右股から緩消法を実施。約2分後、同部位の筋弛緩を確認。歩行動作をしてもらうと、痛みが10から8(NRS改変)と小さくなった。効果があったため続けて同部位に実施。 約5分後、歩行時痛は10から5(NRS改変)と小さくなった。この時点で、左股の痛みのほうが気になるとのことで、次に左股前方に実施。約3分後、歩行時痛は10から8へと小さくなった。続けて同部位に実施。約5分後、歩行時痛は10から6(NRS改変)と小さくなった。
この時点で、再度右のほうが気になるとのことで、右股前方に実施するも、痛みに変化が出なかった。そこで、股関節の痛みは腰部筋群の筋緊張と関連があると考え、その旨をご本人に説明し、施術部位を腰部へと移した。触診にて腰部の筋緊張は左右同程度で、小指押圧深は左右とも3.0cm。腰部左右側面に緩消法を約10分実施したところ、小指押圧深は左右とも3.5cmへと変化しており、筋緊張の軽減を確認。
股関節から大腿部の歩行時痛は、最終的に、右が10から3(NRS改変)、左が10から4(NRS改変)と小さくなった。股関節他動ROM(右/左)に関しては、屈曲で約70°/約75°と変化を認めたが、外転・内転は変化がなかった。今後もご本人による腰部セルフケアの必要性を説明し、治療を終了した。
【考察】今回、緩消法での初回治療で疼痛軽減効果があった。今後は更に腰部筋群の筋緊張を減少させることにより股関節周囲筋群の筋緊張も減り、その結果、歩行時痛の更なる軽減が期待できTHAを回避できる可能性がある、と考えられた症例である。