【患者】50代前半、男性
【主訴】右の肩甲骨の内側が痛い。首を前に倒せない。痛み止めが欲しい。
【既往歴】特になし
【現病歴】3日前に久しぶりにバスケットボールの練習を行った。練習の終盤に右肩甲骨内側に痛みが発生。打撲等の外傷なし。自然軽快を待っていたが痛みに変化がないため、レントゲンの検査と痛み止めの処方を希望され来院。
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【現症】右肩甲骨内側の第3~4胸椎高位付近に痛みあり。頚部前屈で同部の痛みが増強する。頚部前屈可動域(以下、ROM)は、自動で約5°。安静時痛なし。皮下出血斑・皮疹なし。
【検査所見】レントゲンにて肋骨骨折・気胸なし。
【治療と結果】本症例は、視診上、皮下出血斑や帯状疱疹等の皮疹がなく、レントゲン写真では骨折や気胸を認めなかった。また、安静時痛がないことより、心疾患・大動脈疾患も否定的と判断した。よって、本症例の痛みは、右肩甲骨内側にある僧帽筋や大・小菱形筋等の筋群の筋緊張亢進が要因と考えた。
まず、頚部前屈ROM約5°にて一番痛みを感じる部分を指で示してもらい、その部分に緩消法を実施。約1分後、前屈ROM約5°での痛みは10から5(NRS改変)と小さくなり、前屈ROM約15°まで可能となった。効果があったため続けて同部位に実施。約1分後、前屈ROM約5°での痛みは10から0(NRS改変)と消失し、前屈ROM約30°まで可能となった。その時の痛みは施術前と比し半減とのことだった。しかし、前屈ROM約30°での痛みが残存しており、まだ気になるとのことで更に同筋群に実施。約1分後、前屈約30°での痛みは10から0(NRS改変)と消失。前屈約35°まで可能となり痛みは施術前と比し9割減とのこと。
「このぐらい痛みが取れたら痛み止めは飲まなくてもいい」と喜んで頂けた。
【その他】本症例は、外来診察中に行った。通常であればご本人の希望通り、鎮痛剤内服や湿布等の外用剤処方にて経過観察を行うところであるが、緩消法により痛みが軽減し、薬剤を処方せずに済んだ一例である。