【患者】70代後半 女性
【主訴】右腕の痛みと指先の痺れで手が使えないし、夜も痛みで眠れない。
【既往歴】ー
【現病歴】痛みが発現する約10ヶ月前まで理容師の仕事を長年していた。リタイア後、誘因なく両膝、腰、首、右股関節の痛みが発現し、約1ヶ月前からは誘因なく指先(全指)の痺れ、その後、右肩関節から上腕部の痛みも発現し、悪化傾向にあり日常生活に支障をきたす様になった。近医整形外科を受診し、頚椎症性神経根症と診断され投薬加療を受けていた。近医脳神経外科も受診し、MRIの検査をするも脳に異常は無し。
ご家族がネットで緩消法を知り、来院された。
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【現症】本症例はご本人の第一疼痛部位である右上肢の症状に関する報告である。安静時痛が右肩関節から右上腕部全体にあり、右肘関節から末梢部に痛みは現存しないが、右手関節から末梢部に浮腫及び全指先に痺れが現存する。筋萎縮は認められないが、ご本人の主観として握力の低下が認められる。右肩関節の関節可動域制限は認められないが、可動痛はあり、外転痛が著明である。肩甲帯全般に強い筋緊張が確認出来る。
【施術と結果】本症例は右上肢の症状を訴えており、右肩関節から上腕部に安静時痛及び可動痛(外転痛が著明)、右手関節から末梢部にかけて浮腫、及び右指先(全指)に痺れがある。これらの症状の要因として目視及び触察により熱感、腫脹がない事を確認した為、右肩甲帯周辺の筋緊張による血行不良及び、浮腫に関してはリンパ液の滞留であろうと考え、更に肩甲帯周辺の筋緊張の要因は腰部の筋緊張により、肋骨を下方に引き下げる作用が働き、その防御反応として肩甲帯の筋緊張が発生しているのであろうと考察した。
右肩甲帯周辺の筋を触察すると強度の筋緊張を確認した。先ず右上肢への血行不良の要因の一つとして右鎖骨下動脈周辺の筋緊張によるものと考察し、鎖骨頭から中央部付近までの範囲の鎖骨内縁を触察し筋緊張を確認した。同部位に緩消法を約1分行い筋弛緩を確認した。その結果、右指先(全指)の痺れは主観で2割減少し、右肩関節から上腕部にかけての安静時痛は10から8(NRS改変)になった。効果が認められた為、引き続き同部位に約1分緩消法を行い、筋弛緩を確認したが、それ以上の効果は確認できなかった。
次に右肩関節の外転痛を訴えられている為、施術部位を肩関節周辺に移行し、触察により大胸筋停止部周辺の筋緊張を確認し、同部位に緩消法を約1分行い筋弛緩を確認した。その結果、右肩関節の外転痛は10から7(NRS改変)になり、安静時も10から5(NRS改変)になった。更に同部位に緩消法を約1分行い筋弛緩を確認した。
その結果、右肩関節の外転痛は10から5(NRS改変)になり、安静時痛は10から2(NRS改変)になった。その後も同部位に約1分緩消法を行い、筋弛緩を確認するも痛みの軽減が認められなかった為、施術部位を右肩関節の後面に移行し、大円筋周辺の筋緊張を触察により確認し、同部位に緩消法を約1分行い筋弛緩を確認した。
その結果、右肩関節の外転痛は10から3(NRS改変)になり、安静時痛は10から0(NRS改変)と消失した。指先(全指)の痺れ、浮腫に関しては明らかな変化は認められなかった。この時点で外転痛は残るが、安静時が消失した事から、肩甲帯周辺の筋緊張の要因と考察した腰部に施術部位を移行し、触察により腰部全体の強い筋緊張を確認し、腰部側面の筋緊張部位に緩消法を約20分行い、筋弛緩を確認した。その結果、右肩関節の外転痛は10から2(NRS改変)となり、指先(全指)の痺れが主観で5割減少し、浮腫は主観で3割減少し、握力も主観で3割程度、力が入り易くなったと報告を受け、初回の施術を終了した。
これまで悪化傾向にあり、不安な気持ちが強かった様ですが、希望が見えて笑顔で帰路につかれました。