【患者】50代前半、男性
【主訴】左の背中が痛くて息がしづらい
【既往歴】頚椎椎間板ヘルニア(約4年前)
【現病歴】野球の練習で内野の守備中、手掌を大腿部に置いて構えている時に、急に左背部に激痛を感じた。打撲等の外傷なし。痛みで練習は中止した。即、来院された。
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【現症】視診上、左背部には皮疹・皮下出血斑・創なし。触診にて熱感なし。聴診にて喘息等の異常音なし。頚部の可動域制限は確認できず。左肩自動関節可動域(以下、ROM)は屈曲約80°・外転約70°。
【検査所見】Jacksonテスト・Spurlingテスト陰性。胸部単純X線写真にて、自然気胸なし。
【治療と結果】頚部の神経学的異常が無く、また、聴診とX線写真で呼吸異常音や自然気胸を認めなかったため、本症例の痛みは、筋肉の痛みと考えた。つまり、手掌を大腿部に置いて守備で構えている時に、肩甲骨が内転位に強制保持されたため、肩甲骨内側にある筋が強制収縮位となり、菱形筋付近に筋痙攣が発生したと考えた。触診にて、肩甲骨内側の痛みを感じる部位は健側と比し筋緊張が高かった。まず、その痛みを一番感じる部位に緩消法を約30秒実施。筋弛緩を確認し、痛みは10から8(NRS改変)と小さくなった。効果があったため、引き続き同部位に継続。約1分実施し、更に筋弛緩を確認。痛みは10から6(NRS改変)へと小さくなった。更に継続実施し、約2分後、筋弛緩を確認。痛みは10から0(NRS改変)と消失した。左肩自動ROMは屈曲・外転とも約170°に改善。また、主観で、息のしづらさは消失し、肩を動かすのに支障がなくなったと報告を受けた。痛み止めを処方してもらおうかと思っていたがいらなくなった、と喜んで頂けた。