【患者】20代後半、女性
【主訴】2~3年前から、歩くたびにお尻と腰が痛い。両脚が突っ張る。
【既往歴】脳性麻痺
【現病歴】脳性麻痺の後遺症があり、現在他院に通院中。歩行は幼少時より支障があり、走ることはできなかった。2~3年前から、歩行時に常に両臀部・腰部全体に痛みが出現し、また、両下肢全体に突っ張り感が出るようになった。現在、週1回リハビリに通っているが歩容状態は変化無く、歩行時痛も出てきているため、約1ヶ月後に両股関節の手術(観血的関節授動術)を行う予定になっている。その後、足関節は内反尖足で強直があり、歩容状態を見ながら両足関節の手術も実施予定とのこと。ご本人・ご両親とも緩消法に関心があり、筋肉の状態を診てもらうために3人で来院された。
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【現症】仰臥位にて、股関節可動域(以下、ROM)は左右とも屈曲約10°。膝ROMは左右とも屈曲135°・伸展0°で、痛みなく、膝蓋跳動なし。足関節は左右とも内反尖足での強直状態。
【検査所見】腹臥位での他動膝屈曲で、尻上がり現象あり。レントゲン等の画像資料の持参はなく、腰椎や骨盤等の骨形態・病態の詳細不明。
【治療と結果】触診にて、両大腿部伸側の筋緊張が高く、前述の尻上がり現象があることより、両股関節の関節拘縮だけではなく、両大腿四頭筋拘縮もあると考えた。
まず仰臥位で、右股関節前方から大腿部伸側にかけて触診。筋緊張が高い股関節前方中央部から大腿部伸側遠位1/3にかけて順に緩消法実施。約5分後、股屈曲ROMは約15°になった。その後約5分実施するも変化がなかったため、一旦、右股関節の施術を止める。続いて、左股関節前方から大腿部伸側にかけて触診にて筋緊張が高い部分(右下肢と同じく股関節前方中央部から大腿部伸側遠位1/3にかけて)に同様に実施。約5分後、股屈曲ROMは約15°になった。その後約5分実施でこちらもROMに変化がなかった。
次に、両下腿を触診すると両膝窩部から腓腹部にかけての筋緊張が高かったため、歩行時の両下肢突っ張り感の軽減を期待し、その筋緊張が高い部分に順に実施し、両下腿合わせて約10分行った。歩行動作をしてもらうと、腰臀部痛は10から8(NRS改変)と小さくなっており、両下肢の突っ張り感を含めての歩きにくさは主観で20%減とのことだった。
また、両下肢の症状は腰部筋群の筋緊張と関連があると考え、腰部側面にもその後約10分行った。再度、腰臀部痛は10から6(NRS改変)と小さくなっており、両下肢の突っ張り感を含めての歩きにくさは主観で半減したと笑顔で報告を受けた。
【考察】レントゲン等の画像を見ていないため、骨・関節の変形や強直の程度は不明であるが、緩消法による筋腱へのアプローチにより、痛み・歩容状態の改善を得ることができた。今後は、術後の筋・関節拘縮残存があれば、その改善に向けての一助になると考えられる。