椅座位での前屈動作における左腸骨稜周辺の痛みが短時間で消失した一例
【患者】20代後半、男性
【主訴】椅子に座っていると腰が痛くなる
【既往歴】―
【現病歴】学生時代、部活でスポーツに入れ込んでおり、負荷の強い筋肉トレーニングもしていた。就職しデスクワークになった為、座っていることが多くなり、2年ほど前から腰に違和感があった。そのうち消えるだろうと思っていたが違和感は消えることなく、徐々に腰の痛みも発生してきた。市販の鎮痛剤を飲みながら生活していたが痛みが消えず、長時間、座っていると強い痛みが発生し座っていられなくなった。痛みが消えるだろうと思い腹筋・背筋の筋肉トレーニングを実践するが、更に悪化し座っていられる時間も短くなってしまった。
続きを読む
【現症】椅座位の姿勢では10分ほどは座っていられるが、左足にうずくような感覚がある。
来院時は市販の鎮痛剤を飲んでいるのでまだ痛みは小さいほうであるとのこと。椅座位にて、胸腰部自動関節可動域(以下、ROM)前屈約10°で腰部左側から腸骨周辺に痛みが発生し、特に仙腸関節周辺の痛みが強い。
【施術と結果】本症例は、椅座位にて長時間の安静時に痛みが発生するのが主訴の症例である。
鎮痛剤を服用している事、椅座位を継続した状態での痛みの確認が困難な事であるため、可動時の痛みと触察にて主訴の要因と思われる筋緊張の確認を行う。生活の中で発生していた痛みの部位である腰部を触察すると腰部左側に筋緊張があり、右腸骨稜周辺に強い緊張が触知できる。椅座位にて、胸腰部自動ROM前屈約10°で腰部左側から左腸骨周辺に痛みが発生していることから、椅座位を継続した際の痛みに関連すると推察した。
左仙腸関節から上方に約3cmに硬結のような筋緊張が触知され、痛みの要因と判断し筋弛緩部位とする。左仙腸関節から上方に約3cmに緩消法を約2分行い、筋の弛緩を確認した。
椅座位にて、胸腰部自動ROM前屈約10°での左腸骨周辺の痛みが10から0(NRS改変)と消失した。痛みが消失することで、胸腰部の可動も広がっていると仮定し、可動と痛みの確認を続ける。
椅座位にて、胸腰部自動ROM前屈約30°にて左仙腸関節周辺に痛みが発生する。胸腰部自動ROM前屈の可動域が広がり、痛みの発生部位も小さくなっているとのことだった。
筋弛緩部位は左仙腸関節から上方に約3cmと同一部位に継続して緩消法を行う。約10分、緩消法を行う筋の弛緩を確認した。椅座位にて、胸腰部自動ROM前屈約30°での左仙腸関節周辺に痛みが10から2(NRS改変)へとなった。
日常生活に戻り、椅座位での継続時間が延長できるように、今後も経過を観察していく。