第5中手骨骨折後に発生した環指・小指関節拘縮の改善例
【患者】60代後半、女性
【主訴】手を握ったときに、薬指と小指が突っ張って曲げづらい
【既往歴】特記事項なし
【現病歴】約4ヶ月前に転倒し、左第5中手骨頚部骨折で、約2ヶ月間シーネ固定を行った。骨癒合の完了後に通院リハビリを行ったが、環指・小指を曲げたときの突っ張り感(以下、引張感)が残存しており、最後まで曲がらない。
続きを読む
【現症】環指・小指屈曲時の引張感は、特に、中手指節関節(以下、MP関節)付近に強く、両指とも屈曲制限が残存している。指尖手掌距離(tip-palm distance:以下、TPD)は、環指約20mm・小指10mmであった。
【検査所見】単純レントゲン写真では骨癒合良好であり、環指・小指ともMP関節の変形性変化なし。
【治療と結果】環指・小指屈曲時の引張感は、骨折による内出血および外固定による軟部組織の癒着によるものと考えたため、まずは屈曲時に最も引張感が強い部分をご本人に示してもらい、その部分(環指・小指MP関節背側間から第4・5中手骨間背側にかけて)に緩消法を実施。
約3分後、環指・小指屈曲時の引張感の変化を確認すると、主観で1~2割減とのこと。TPDは環指・小指とも2~3mm改善した。続けて同部分に実施。約5分後、引張感・TPD共に変化がなかったため、環指・小指伸筋腱とつながる前腕伸筋群の筋緊張と関連があると考え、前腕伸側中央部から近位にかけて、触診にて筋緊張が高い部分に実施。
約10分後、前腕伸筋群の筋弛緩を確認。TPDは環指約10mm、小指約5mmへと改善した。続けて、前腕伸筋群の同部分に実施。約15分後、更に筋弛緩を確認。TPDは環指約5mm、小指約3mmと改善した。環指・小指屈曲時のMP関節周囲の引張感は、主観で5割減となった。
更に残りの施術時間で同部分に実施するもこれ以上の変化はなかった。残存している引張感は軟部組織の癒着と関連があると考えたため、完全なTPD改善までには時間がかかる旨を説明。しかし、最近症状に変化がなかったため、今後も治療を継続することにより更に良くなる可能性がわかり、喜んでいただけた。