重度の腰部脊柱管狭窄症で、下肢知覚鈍麻による立位保持が困難な状態の改善例
【患者】60代後半、男性
【主訴】右足首と足の指が動かしにくい。左脚の膝から下も力が入りにくい。両足先の痺れがひどい。
【既往歴】脳梗塞(約10年前)
【現病歴】約10年前に脳梗塞に罹患以降、近医神経内科に定期的通院中。脳梗塞後の後遺症としての四肢麻痺はなく、呂律が軽度回りにくい程度だった。約2年前、右下肢全体に痺れ感が出現するも、歩行に支障が無かったため、そのままにしていた。約5ヶ月前、右臀部に力が入りにくくなり、歩行時にふらつき・跛行が出現。また、その頃から、両足部全体の痺れが出現。約2ヶ月前、近医神経内科受診時にMRI検査を行い、腰部脊柱管狭窄症を指摘された。その時は、両足部全体の痺れは悪化していた。特に、右足趾には不全麻痺が出現しているため、手術が必要との説明を受けた。処方薬のビタミンB12製剤・血流改善薬等を内服しているが、効果なし。約1週間前より、左下腿にも力が入りにくくなってきた。
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【現症】右下肢全体・左下腿全体に痺れ感があり、椅子座位・仰臥位等の安静時にも感じ、24時間継続している。両足部は全体的に痺れ感・知覚鈍麻があり、右足部に強い。足部皮膚表面の知覚残存は主観で、右:10分の1程度、左:10分の5程度。また、腰部全体から両臀部にも知覚鈍麻があり、皮膚表面の知覚残存は主観で10分の5程度。徒手筋力テスト(以下、MMT)では、前脛骨筋が右:3、左:4。長母趾伸筋が右:2、左:4。長趾屈筋が右:3、左:4。歩行時は松葉杖を使用している。
【検査所見】両下肢の膝蓋腱・アキレス腱反射低下
【治療と結果】まず、右足関節・足趾に不全麻痺が出現しているため、今後、腰椎の手術が必要になる可能性が高い旨を説明。しかし、腰部・右下肢・左下腿痺れ感の改善を期待し、緩消法治療開始。立位保持が困難なため、椅子座位にて実施。
まず、触診にて、腰部両側面から腸骨稜後方にかけての筋群は全体的に筋緊張が高く、腰部側面小指押圧深は左右とも1cm。腰部筋群の筋緊張に原因があると考え、腰部両側面から後方にかけて緩消法を実施。
約10分後、主観で、指先で触られている腰部の皮膚感覚が少しわかるようになってきたとの報告を受けた。続けて同部に継続。合計30分実施し、腰部両側面の筋弛緩を確認。小指押圧深は左右とも1cmから3cmに変化し、立位動作をしてもらうと、主観で立位保持がしやすくなった、とのことだった。また、歩行動作をしてもらうと、主観で左下腿に力が20%程度増加した感じがすると報告を受けた。MMTには変化がなかった。右下肢に関しては、痺れ感・MMT共に変化を認めなかったため、今通院中の病院で手術に関する相談をするように促した。