右全人工膝関節置換術後に継続する歩行時の膝痛に対し効果があった一例
【患者】70代前半、女性
【主訴】歩くときに右膝の前側が痛い
【既往歴】3年前、子宮脱改善手術実施。10年以上前から、高血圧症にて近医内科に通院中。
【現病歴】約10年前より、両変形性膝関節症と変形性腰椎症で当院にリハビリ通院中であった。もともとの歩行時の右膝痛が、特に誘因なく増悪したため、提携病院にて右膝MRIを実施。その結果、「大腿骨内顆骨壊死」の所見を認めた。また、その頃から夜間痛も強くなったため、全人工膝関節置換術(以下、TKA)を勧めた。後日、提携先の病院で、右TKAを実施。約3週間の入院リハビリの後、杖なしで退院。その後、自宅療養をしていた。術後2ヶ月ほど経過し、当院へ来院。疼痛性の跛行は消失していた。当初の膝痛は良くなったが、膝の前側にある術創部の両端周囲が痛いとのことだった。
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【現症】術前の単純レントゲンの片脚立位正面で内反膝あり。術後約2ヶ月。膝前面の約10cmの縦長の術創部両端付近に圧痛あり。発赤・熱感なし。膝関節可動域(以下、ROM)は、自動で屈曲120°・伸展0°。膝自動屈曲・伸展時、膝内側にひっかかる感じがするとのこと。
【検査所見】単純レントゲン写真にて、TKA術後状態。片脚立位でのMikuliczの荷重線は、術前は内側80%であったが、術後は内側5%に改善。
【治療と結果】まずは、右下肢の大腿四頭筋の筋緊張が高い部分と、TKA術創部両端へ緩消法を実施。約10分後、膝の歩行時痛が、10から7(NRS改変)へ小さくなった。
次に、腰部の筋緊張と、大腿四頭筋の筋緊張からの膝痛が関連していると考え、腰部側面の筋緊張が高い部分にも実施すると、歩行時痛は更に7から5(NRS改変)へと小さくなった。
【考察】歩行時の膝痛には、大腿四頭筋だけではなく、腰部の筋緊張が関連していることが考えられる。